01. 創設秘話 ─ 創世期のいきさつ
きっかけは、
海を越えて届けられた愛

総合施設長
平岡 毅(ひらおか たけし)
- 出身地
- 奈良県大和高田市
- 生年月日
- 1973年2月18日
01. 創設秘話 ─ 創世期のいきさつ
きっかけは、海を越えて届けられた愛
社会福祉法人カトリック聖ヨゼフホームは、キリスト教カトリック男子修士会のマリスト会を母体としています。奈良県御所(ごせ)市にある養護老人ホーム「聖ヨゼフ・ホーム」と、奈良市にある特別養護老人ホーム「サンタ・マリア」の2つの拠点にて永きに渡り、福祉に尽力してきました。
養護老人ホーム(養護)と特別養護老人ホーム(特養)は、似た言葉ですが施設内容は異なります。養護は、経済的な事情のある高齢者や身寄りのない方、自宅で自力での生活が困難な方などを受け入れ、生活支援をしながら社会復帰を目指す施設です。世間一般的には介護サービスは提供されませんが、聖ヨゼフ・ホームでは奈良県知事指定を受けて介護サービスを提供できる「養護老人ホーム」です。それに対し特養は、要介護3以上の高齢者が身体介護や生活支援を受けて生活する施設です。
聖ヨゼフ・ホーム発足のきっかけは60年以上前に遡(さかのぼ)ります。
創設当時は、敗戦の混乱は落ち着いてきたとはいえ、御所(ごせ)や近隣の地域では子どもも高齢者もみな、ギリギリの暮らしをしていました。その状況を憂(うれ)いた神父様方は、まずは子どもたちに幼稚園をつくり、そして、お年寄りが安心して暮らせる高齢者施設を作ったのです。新しい施設は、当時「ミルク色のホーム」と新聞にも取り上げられるほど話題になりました。「憂(うれ)う」とは、思い悩んだり心配したりすることですが、特に行く末を案じる気持ちの強い言葉です。単なる同情や慰めのレベルではなく、神父様方は日本の将来まで案じて関わってくださったのです。その想い、深い愛を私達は受け継いできました。
そもそも、神父様方はなぜ日本に来られたのでしょうか。それは第2次世界大戦中に従軍司祭として日本軍の捕虜となり、「死の鉄道」と呼ばれた泰緬鉄道(タイ~ビルマ※現在のミャンマー間)の建設作業に従事したライオネル・マースデン神父がきっかけでした。
鉄道建設はジャングル地帯で行われ、捕虜数万人の犠牲者を出したと記録されている非常に苛酷な労働でした。日本人から非道な仕打ちを受け、マースデン神父は深い深い憎しみを持ちました。
しかしそれでも「憎しみからは何も生まれない。もし、生きてオーストラリアに帰れたら、必ず日本人と和解し、日本を変えよう」と強く決心されたそうです。
戦後まもなく、オーストラリアにて激しい反日感情が起こる中で「日本人を赦そう」と呼び掛ける同神父の博愛精神に感銘を受けたオーストラリア人の若者達が日本に渡りました。そのミッションはカトリックの「隣人愛」、「奉仕」の精神を伝えていくことです。
その中の1人、奈良市を中心に戦争未亡人や子ども達を支援し、豪日の和解に奔走されたトニ・グリン神父の生涯は、神父を敬愛するみなさんの力で、ドキュメンタリー映画「日豪に架ける 愛の鉄道」として残されています。
02. 創設秘話 ─ ターニングポイント
制度や社会の変化に対して、
常に柔軟に対応し続ける
施設の歴史の中で転換期はいくつかありましたが、なかでも大きな変化をもたらしたのは、2000年4月の介護保険法施行です。世の中の目が介護に向き、同時期に介護支援専門員(ケアマネジャー)の職種が創設されました。
総合施設長の平岡は、創設と同時に資格を取得し、介護保険の相談に応じる居宅介護支援事業所を立ち上げました。そしてサンタ・マリアでは訪問介護・通所介護・短期入所生活介護を、聖ヨゼフ・ホームでは訪問介護・特定施設入居生活介護などを始め、養護と特養の両方をマネジメントしていくようになりました。施設の仕事と地域の仕事を両側面からみることで福祉の幅を広げていったのです。
また、2006年の介護保険制度の見直しに伴って、介護予防が重視され養護老人ホームにも介護保険が適用されるようになり、ホームの中の「介護」にいかに取り組むかが課題となりました。とにかく相談を受け付けて繋ぐ先を考え、「困った時のヨゼフさん!」の土台を作っていったのです。

施設の歴史の中で転換期はいくつかありましたが、なかでも大きな変化をもたらしたのは、2000年4月の介護保険法施行です。世の中の目が介護に向き、同時期に介護支援専門員(ケアマネジャー)の職種が創設されました。
総合施設長の平岡は、創設と同時に資格を取得し、介護保険の相談に応じる居宅介護支援事業所を立ち上げました。そしてサンタ・マリアでは訪問介護・通所介護・短期入所生活介護を、聖ヨゼフ・ホームでは訪問介護・特定施設入居生活介護などを始め、養護と特養の両方をマネジメントしていくようになりました。施設の仕事と地域の仕事を両側面からみることで福祉の幅を広げていったのです。
また、2006年の介護保険制度の見直しに伴って、介護予防が重視され養護老人ホームにも介護保険が適用されるようになり、ホームの中の「介護」にいかに取り組むかが課題となりました。とにかく相談を受け付けて繋ぐ先を考え、「困った時のヨゼフさん!」の土台を作っていったのです。

ロゴに込めた意味
神父様達の創始の思い、『隣人愛』、『奉仕』に『福祉』の想いを加えた、周囲を包み込み愛するカトリックの精神が込められています。その精神をミッションとし、聖ヨゼフ・ホームは「どんな人も断らない」、サンタ・マリアは「老いに寄り添い、いのちに寄り添う」という言の葉を大切にしています。
PAST
CAREER
これまでの経歴

1961年12月
社会福祉法人カトリック聖ヨゼフホーム設立
(法人設立認可:431号)
1962年1月
聖ヨゼフ・ホーム事業開始
(定員30名。1963年、定員50名に増員)
1991年8月
特別養護老人ホーム
サンタ・マリア開設
入所50床、短期入所10床
2006年4月
介護保険法施行
介護事業開始(訪問介護・通所介護・
短期入所生活介護・居宅介護支援)
2006年6月
聖ヨゼフ・ホーム
訪問介護、外部サービス利用型特定施設入居生活介護、介護予防事業開始
2016年7月
聖ヨゼフ・ホーム
一般型特定施設入居者生活介護に類型変更
2019年4月
聖ヨゼフ・ホーム
全館建替え工事(全3期)開始
2021年10月
竣工
2025年3月
現在に至る
歩んできた道
聖ヨゼフ・ホームは、昭和・平成・令和と3つの時代を経ながら60年以上、奈良県奈良市と御所(ごせ)市で高齢者福祉を丁寧に重ねてきました。制度変更や時代の要請に合わせて柔軟に対応しながらも、マリスト会の神父様方の創始の想いである隣人愛の精神を受け継ぎ続けています。

─ 平岡総合施設長から見た福井施設長
繊細かつ懸命に施設を切り盛りする、
縁の下の力持ち
福井さんは、別の法人で働いていたところを、人間味に惹かれた私が直感でお誘いしました。最初は戸惑いもあったでしょうが、私たちの仕事である「福祉を届ける」ということを、職員さんと一緒に体現してくれています。本当に人に寄り添うことのできる優しい施設長です。大柄な外見とは反比例するように繊細な心の持ち主なので、悩むこともあると思います。でも、一生懸命に自分自身を奮い立たせて、ひとつひとつ課題を乗り越えていく姿に、いつも感謝しています。自分で考えるべきことと、上司に相談することのバランスをうまくとりながら推進する力があり、とても安心して任せられる人です。

─ 福井施設長から見た平岡総合施設長
ストイックに自分の信念を貫く、
福祉の伝道師
経営陣でありつつ現場レベルの最先端な介護技術も理解する、オールマイティのスーパーマンとして皆から尊敬され目標にされている人です。現在も在宅(居宅)支援の主任ケアマネジャー研修会などを担当されています。それは、制度だけでなく「福祉現場の今」も理解していないとできないことで、その情報収集力には感銘を受けます。
また、「自分が元気でないと人は助けられない」と、食事や運動など、ストイックに日々の生活を摂生・管理されています。裏の努力を身近な人にも見せない姿は、絶対にマネができません。
「養護大好き」「福祉のひかりと成る」が口癖で、「一緒に手をつないで福祉をやっていこう」と、自施設の手の内を惜しみなく伝える講演を全国でする、養護・福祉の伝道師でもあります。
STAFF
VOICE
人物像
MANAGEMENT
SECRETS
運営秘話

01. 運営秘話 ─ 地域社会への取り組み
地域住民の心をつかんだ、
施設長の真摯さ

何にでも「生みの苦しみ」はつきものです。聖ヨゼフ・ホームの時もサンタ・マリアの時も、創設期には福祉や神父様方のミッションに対して理解を得ることが難しい時期がありました。
聖ヨゼフ・ホームの時は、救貧の養老院のイメージが強く、抵抗感があったようです。多様性の考え方が浸透していない当時の地域において、外国人である神父様方が大金をはたいて土地を買い、地域を良くするための施設を建てようとする姿は奇異に映ったのでしょう。
聖ヨゼフ・ホームが地域に受け入れられるきっかけを作ったのは、教会の神父、幼稚園の園長、養護老人ホームの施設長を1人でこなしたニュージェント神父です。ニュージェント神父は、地域交流親睦会として地域のみなさんを教会や幼稚園、養護老人ホームの敷地にお呼びして食事をふるまい、集いの機会を作ったのです。その会でも一緒に盆踊りをするなど、神父様が率先しておもてなしをして、人々との親交を深めました。その交流会は今も続いています。
実行する背中を見せても、信頼を獲得するまでには通常は何年もかかるものです。しかしニュージェント神父の、朝から晩まで汗を流して率先して施設のために働く姿は、瞬く間に地域の方々の心を掴みました。「あの神父さんはすごいな。あんな人は日本人にもいないな」と感心するとともに打ち解けてくれたのです。ニュージェント神父は後に、サンタ・マリアの初代施設長も務め、リタイア後も皆から慕われ、記憶に残る施設長となりました。

こだわりのフロー①
当法人では、職員はもちろんその家族も大切にしています。ご利用者さまに福祉を提供するのは、職員ですが、職員に福祉を届けるのは施設長だからです。福祉を受けとった職員は幸せな気持ちでご利用者さまに福祉を届けてくれます。そうして愛の拡大再生産が続いていきます。
01. 運営秘話 ─ 地域社会への取り組み
地域住民の心をつかんだ、
施設長の真摯さ
何にでも「生みの苦しみ」はつきものです。聖ヨゼフ・ホームの時もサンタ・マリアの時も、創設期には福祉や神父様方のミッションに対して理解を得ることが難しい時期がありました。
聖ヨゼフ・ホームの時は、救貧の養老院のイメージが強く、抵抗感があったようです。多様性の考え方が浸透していない当時の地域において、外国人である神父様方が大金をはたいて土地を買い、地域を良くするための施設を建てようとする姿は奇異に映ったのでしょう。
聖ヨゼフ・ホームが地域に受け入れられるきっかけを作ったのは、教会の神父、幼稚園の園長、養護老人ホームの施設長を1人でこなしたニュージェント神父です。ニュージェント神父は、地域交流親睦会として地域のみなさんを教会や幼稚園、養護老人ホームの敷地にお呼びして食事をふるまい、集いの機会を作ったのです。その会でも一緒に盆踊りをするなど、神父様が率先しておもてなしをして、人々との親交を深めました。その交流会は今も続いています。
実行する背中を見せても、信頼を獲得するまでには通常は何年もかかるものです。しかしニュージェント神父の、朝から晩まで汗を流して率先して施設のために働く姿は、瞬く間に地域の方々の心を掴みました。「あの神父さんはすごいな。あんな人は日本人にもいないな」と感心するとともに打ち解けてくれたのです。ニュージェント神父は後に、サンタ・マリアの初代施設長も務め、リタイア後も皆から慕われ、記憶に残る施設長となりました。
02. 運営秘話 ─ 体感の醸成
3年の工期を工夫と機転で乗り切ったからこそ、愛着もひとしお
2021年に竣工した新しい聖ヨゼフ・ホームの施設は、以前あった施設を解体しながら入れ替えるようにして建てました。3年に渡る大工事のなか、敷地内での引っ越しも3回行いました。荷物の移動も大変でしたが、それ以上にご利用者さま方が混乱されないよう配慮することに神経を使いました。食事面は特にみなさんが楽しみにされているので、仮設厨房でも衛生管理に気を配っておいしいものを作りました。
旧建物解体の際の粉塵や騒音、自然災害やコロナウィルスの蔓延などで備品や資材が届かない、設計図通りに工事が進まないなど、いろいろな問題が勃発。ご利用者さまのことを懸命に支えてくれていた職員の士気も乱れがちなときもありました。それでも「施設がより良くなるため」と皆が歯を食いしばって力を尽くしてくれたおかげで乗り越えることができました。
我慢や辛抱も必要でしたが、それを理解し協力し合ったからこそ今の新しい施設があります。最終的に素敵な施設を建てることができたのは、職員の頑張りと、ご利用者さまやそのご家族、地域の方々のご理解があったからこそです。竣工時は皆が感無量でした。
施設がキレイなのは「新しい」から
ではなく「大切に使う」から
新しい施設のきれいさは目で見えるものです。しかし、真のきれいさは、目に見えないものによってできていると信じています。竣工から3年以上経った今も、施設は新しくきれいに見えます。それはみんなで大切に使ってきた心の現れです。「自分を大切にするように、他人のことも大切に愛しなさい」というのが隣人愛の精神。ご利用者さまに対するだけでなく、建物や備品にまで愛を持てる職員達で、本当にありがたいと思っています。感謝!

2021年に竣工した新しい聖ヨゼフ・ホームの施設は、以前あった施設を解体しながら入れ替えるようにして建てました。3年に渡る大工事のなか、敷地内での引っ越しも3回行いました。荷物の移動も大変でしたが、それ以上にご利用者さま方が混乱されないよう配慮することに神経を使いました。食事面は特にみなさんが楽しみにされているので、仮設厨房でも衛生管理に気を配っておいしいものを作りました。
旧建物解体の際の粉塵や騒音、自然災害やコロナウィルスの蔓延などで備品や資材が届かない、設計図通りに工事が進まないなど、いろいろな問題が勃発。ご利用者さまのことを懸命に支えてくれていた職員の士気も乱れがちなときもありました。それでも「施設がより良くなるため」と皆が歯を食いしばって力を尽くしてくれたおかげで乗り越えることができました。
我慢や辛抱も必要でしたが、それを理解し協力し合ったからこそ今の新しい施設があります。最終的に素敵な施設を建てることができたのは、職員の頑張りと、ご利用者さまやそのご家族、地域の方々のご理解があったからこそです。竣工時は皆が感無量でした。
施設がキレイなのは「新しい」
から
ではなく「大切に使う」から
新しい施設のきれいさは目で見えるものです。しかし、真のきれいさは、目に見えないものによってできていると信じています。竣工から3年以上経った今も、施設は新しくきれいに見えます。それはみんなで大切に使ってきた心の現れです。「自分を大切にするように、他人のことも大切に愛しなさい」というのが隣人愛の精神。ご利用者さまに対するだけでなく、建物や備品にまで愛を持てる職員達で、本当にありがたいと思っています。感謝!

こだわりのフロー②できる方法を探す
職員から「ご利用者さまのこの願いを叶えたい」という申し出があれば、他のご利用者さまに危険が及ばない限り、全力で応援します。NG事項の多くは、施設の都合ですから。「特別扱い」でなく
「個別的に」関わり、「どうしたら実現できるか」を考える職員をサポートしています。
03. 運営秘話 ─ 施設の雰囲気づくり
優しい気持ちが伝播する、
過ごしやすい施設づくり

総合施設長の平岡は常々、施設を利用する方にも働く職員にも優しい気持ちでいてほしいと願っています。例えば施設における雰囲気づくりについては、こんなエピソードがあります。
施設にお掃除ロボットを導入しようとした際、平岡はたった1つだけ条件をつけました。
それは「お掃除ロボットの横を通るとき、心からの感謝を持って“ご苦労様”と声をかけること」。掃除は本来、職員がするものです。そこにお掃除ロボットを導入すれば、職員は楽になるでしょう。だからこそ、素通りしたり邪魔にしたりするのではなく、自分の代わりに働く姿を気に留め、きちんと感謝することを促したのです。ロボットは機械なので感情はありません。それでも、声をかけられれば何だか嬉しそうな様子で働いてくれているように見えます。
そのような職員の様子を見たご利用者さまにも、その雰囲気は伝播します。気軽に声をかけあえる場は非常に大切です。それはなんとなく生まれるものではなく、職員が風土として作っていくもの。福祉とは、人々の幸福で安定した生活を公的に達成しようとすること。日々のひとつひとつを「有難い」ことと捉えて感謝の気持ちを持つことから幸せは生まれてくるのです。
03. 運営秘話 ─ 施設の雰囲気づくり
優しい気持ちが伝播する、
過ごしやすい施設づくり
総合施設長の平岡は常々、施設を利用する方にも働く職員にも優しい気持ちでいてほしいと願っています。例えば施設における雰囲気づくりについては、こんなエピソードがあります。
施設にお掃除ロボットを導入しようとした際、平岡はたった1つだけ条件をつけました。
それは「お掃除ロボットの横を通るとき、心からの感謝を持って“ご苦労様”と声をかけること」。掃除は本来、職員がするものです。そこにお掃除ロボットを導入すれば、職員は楽になるでしょう。だからこそ、素通りしたり邪魔にしたりするのではなく、自分の代わりに働く姿を気に留め、きちんと感謝することを促したのです。ロボットは機械なので感情はありません。それでも、声をかけられれば何だか嬉しそうな様子で働いてくれているように見えます。
そのような職員の様子を見たご利用者さまにも、その雰囲気は伝播します。気軽に声をかけあえる場は非常に大切です。それはなんとなく生まれるものではなく、職員が風土として作っていくもの。福祉とは、人々の幸福で安定した生活を公的に達成しようとすること。日々のひとつひとつを「有難い」ことと捉えて感謝の気持ちを持つことから幸せは生まれてくるのです。
CUSTOMER
VOICEご利用者さまからの評価

いつまでも食の楽しみを持ち続けられる工夫が嬉しいです
聖ヨゼフ・ホームで嬉しいのは、食事です。メニューは四季折々に工夫されています。陶器の食器に盛られているので美しいですし、おいしさも増す感じがします。お昼は普段から交流のある、隣の認定子ども園の子ども達と同じ献立なのも励みになります。子ども達も頑張って食べているのだから、私達もしっかり食べて元気でいないと。隣の席の方や職員さんとお話ししながら、毎日の食事を楽しんでいます。
誕生月にはお寿司や天ぷらなど、好きなものを食べに外出することもあります。コロナ禍のときは出前をとったり、板前さんに厨房に来てお寿司を握っていただいたりしました。やはり食事はおいしいだけでなく楽しいのが一番ですよね。お肉なら、夏場のBBQも楽しいひとときです。炭火で焼くことで、おいしい匂いが立ち上り、いつもより食欲が沸きます。
制度の隙間にこぼれた人をていねいにケアしていくのが養護老人ホーム
福井施設長
養護老人ホームは高齢者対象というイメージがありますが、さまざまな事情で自宅生活が困難な方には、年齢を問わず携わっています。その中で印象に残っているのが、一軒家でひとり暮らしをされていた50代の女性です。
両親の遺産があり経済的には困窮していなかったものの、お風呂が壊れたのを機に入浴される事が少なくなり、外出が億劫になって家に引きこもるようになりました。清潔が保てませんし、買い物にも行けないので食事が偏り、だんだんと健康面も心配な状態に。ただ、「どうしているの」と声をかけても、返答はいつも「大丈夫」。一見「普通」なので、なかなか福祉につながりません。制度の狭間におられる方です。
このような方も引き受けるのが養護老人ホームです。短期間でも入所すれば、栄養バランスの良い3度の食事を摂って規則正しい生活をしていただけます。健康を取り戻し、また自宅で一人暮らしができるよう回復してもらうことが目標でした。
初めは入所を嫌がって、感情的になられたこともありました。でも少しずつ馴染んでくださって、入所中に一緒に自宅の片付けをしたり、家の周りの樹木を剪定したり、お風呂の修理をしたりしました。免許の更新や車検の手配、携帯電話の更新にも付き合いました。多少若くても、人の助けが必要なときはあるのです。
健康を取り戻せば、自宅復帰できるよう促すのも我々の仕事です。まずは1泊から始めて徐々に泊数を増やしていきます。自宅で過ごせるようになれば、次は市町村・社会福祉協議会と連携をとり、その後の生活の見守りを任せていきます。この方は入所から3年以上経ちますが、今も無事に自宅で生活をされています。
このような福祉的な携わり方は養護老人ホームでしかできないことだと思います。
「特別扱い」ではなく「個別的」なケアでQOLを向上
平岡総合施設長
たくさんの名物ご利用者さまの中でも、公私ともに感謝の気持ちを持って思い出すのはKさんです。Kさんは私の子ども達ともよく遊んでくれて、時には川の字になって眠っているほど、子ども達もよくなついていました。
ある時、そのKさんが病気になり入院と手術が必要になりました。養護老人ホームには継続して入居するための手続きがあり、約3ヶ月以上入院したら同じ養護施設に戻れなくなります。当時の私は生活相談員で、Kさんの施設入居権を保持するために、なんとしてでも1泊を聖ヨゼフ・ホームで過ごしてもらおうと、いろいろな策を考えました。
その際、Kさんにはもう1つの願いがありました。それはお寿司屋さんでウニやイカを食べること。
彼女はストレッチャーでしか帰れない状態でした。大きい車で迎えに行き、お寿司屋さんの全面協力のもと、ストレッチャーのまま店内に入って、背を少し上げてお寿司を食べてもらいました。とてもとても喜んでくれて「これはもう、あの世まで持っていく。もう思い残すことはない」と言われましたが、それからも結構長生きされました。
この話を聞いて、「ウニなどの生ものを食べさせるなんて」と眉をひそめる方もいるかもしれません。ですが、わがままや言いなりではなく、願いのうち「“ここ”を叶えないと福祉じゃないな」という瞬間があります。それをついつい「平等」や「特別扱いはダメ」と言って排除しがちになります。でも考えてみたら、全員が違う人なので全て「個別的なケア」なのです。
単純に「老いに寄り添い、いのちに寄り添う」と言葉にするのはかっこいいし簡単です。けれど、どう寄り添うのか、どれぐらい寄り添えているのか、より寄り添うには…と、今も常に自問自答しています。
CUSTMER
STORYご利用者さまエピソード
TO THE
FUTURE
これからのビジョン

01. ビジョン ─ これからの未来
ハイブリッド型クアッド福祉を地域に浸透させ、寄辺なき方に福祉を届ける

人々の生き方が多様になってきた今日だからこそ、これからの福祉には、制度やシステムの隙間に陥ったり頼る人がいなかったりする、行き場のない方にも福祉を届けるきめ細やかさが必要です。
聖ヨゼフ・ホームはまず養護老人ホームとしての措置入所(自治体による行政処分)に加えて契約入所(措置入所に繋がらない場合やご事情を汲んだ個人的契約)にも力を入れています。
それに加えて、2023年9月29日には奈良県の指定を受けて居住支援法人(指定番号:第011号)となり、住宅を確保する際に特別な配慮が必要な方々(低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子どもを養育する者など)に対して、安心して暮らせる住まいを確保する支援と確保後の見守り等の支援も含め実施しています。
また、自立準備ホームとして、矯正施設からの出所者に対して宿泊場所を提供し、行政と連携して地域社会での自立が叶うようサポートをしています。
従来の「養護老人ホームの措置入所」の枠に捕らわれず、4つの福祉を目的にした「ハイブリッド型クワッド福祉」が令和の時代に求められている養護老人ホームだと考えています。
どんな人も断らず、小さな人、声を出せない人、生きづらさのある人、行き場がない人、頼るところや頼る人なき方に率先して福祉を届けていくのが聖ヨゼフ・ホームですし、そうあり続けたいと思っています。
01. ビジョン ─ これからの未来
ハイブリッド型クアッド福祉を地域に浸透させ、寄辺なき方に福祉を届ける
人々の生き方が多様になってきた今日だからこそ、これからの福祉には、制度やシステムの隙間に陥ったり頼る人がいなかったりする、行き場のない方にも福祉を届けるきめ細やかさが必要です。
聖ヨゼフ・ホームはまず養護老人ホームとしての措置入所(自治体による行政処分)に加えて契約入所(措置入所に繋がらない場合やご事情を汲んだ個人的契約)にも力を入れています。
それに加えて、2023年9月29日には奈良県の指定を受けて居住支援法人(指定番号:第011号)となり、住宅を確保する際に特別な配慮が必要な方々(低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子どもを養育する者など)に対して、安心して暮らせる住まいを確保する支援と確保後の見守り等の支援も含め実施しています。
また、自立準備ホームとして、矯正施設からの出所者に対して宿泊場所を提供し、行政と連携して地域社会での自立が叶うようサポートをしています。
従来の「養護老人ホームの措置入所」の枠に捕らわれず、4つの福祉を目的にした「ハイブリッド型クワッド福祉」が令和の時代に求められている養護老人ホームだと考えています。
どんな人も断らず、小さな人、声を出せない人、生きづらさのある人、行き場がない人、頼るところや頼る人なき方に率先して福祉を届けていくのが聖ヨゼフ・ホームですし、そうあり続けたいと思っています。
02. ビジョン ─ 目指すべき目標
聖ヨゼフ・ホームに行けばなんとかなる
温故創新で、地域の方々の心と生活のセーフティネットに
当法人に相談にくる方は、行き場がなく困っています。そのような方々をきっちり受け止め、「聖ヨゼフ・ホームなら必ずなんとかしてくれる」と安心していただける体制を、未来に向かって進化および深化させていくことが目標です。
そのためには、措置入所と契約入所を行き来できる柔軟性や、家を借りられないと言われている方でも、居住支援法人として必ずどこかに繋げる気概が必要だと思っています。
また、罪を犯しても人生は続きます。更生したり回復したりした後に受け入れ場所がなければ、それが再犯の引き金になることもあります。だからこそ、しっかり受け入れて支援する。それが私達、聖ヨゼフ・ホームです。要支援者を各省の制度や機関の隙間に落とさないよう、「総合相談窓口」としてワンストップで福祉を提供していきます。
「どんな人も断らない」のは、職員にとっては大変な話です。それでも職員には、「自分達は介護技術を駆使して1人ひとりに福祉を届けるプロフェッショナルなのだ」との自覚を促し、チームワークの醸成に力を入れています。
それぞれの事業が全て「福祉」に繋がっています。未来に向けて、故きを温ねて新しきを知る。そこからもう1つ進めて、古き福祉から学び、新しい福祉を創る、「温故創新」を進め、「福祉のひかりと成る」のが私達です。
聖ヨゼフ・ホームだけでなく、福祉に携わるすべての施設・事業所が元気でいられるように、当法人が目指すべき方向を見据えて目標を持ち、そこに計画的にたどり着けるように導く“ひかり”=羅針盤のような存在でありたいと願っています。

当法人に相談にくる方は、行き場がなく困っています。そのような方々をきっちり受け止め、「聖ヨゼフ・ホームなら必ずなんとかしてくれる」と安心していただける体制を、未来に向かって進化および深化させていくことが目標です。
そのためには、措置入所と契約入所を行き来できる柔軟性や、家を借りられないと言われている方でも、居住支援法人として必ずどこかに繋げる気概が必要だと思っています。
また、罪を犯しても人生は続きます。更生したり回復したりした後に受け入れ場所がなければ、それが再犯の引き金になることもあります。だからこそ、しっかり受け入れて支援する。それが私達、聖ヨゼフ・ホームです。要支援者を各省の制度や機関の隙間に落とさないよう、「総合相談窓口」としてワンストップで福祉を提供していきます。
「どんな人も断らない」のは、職員にとっては大変な話です。それでも職員には、「自分達は介護技術を駆使して1人ひとりに福祉を届けるプロフェッショナルなのだ」との自覚を促し、チームワークの醸成に力を入れています。
それぞれの事業が全て「福祉」に繋がっています。未来に向けて、故きを温ねて新しきを知る。そこからもう1つ進めて、古き福祉から学び、新しい福祉を創る、「温故創新」を進め、「福祉のひかりと成る」のが私達です。
聖ヨゼフ・ホームだけでなく、福祉に携わるすべての施設・事業所が元気でいられるように、当法人が目指すべき方向を見据えて目標を持ち、そこに計画的にたどり着けるように導く“ひかり”=羅針盤のような存在でありたいと願っています。